◎安倍元首相には国葬が相応しい。
◎国葬の法的根拠は内閣府設置法!
◎侵害留保説では、そもそも法的根拠は必要ない!
――――――――――――――――――――――――――――――――――
※筆者は昔、朝日新聞のエース記者のファンでした。
そんなお花畑が、目覚めるキッカケとは?
安倍元首相の国葬に法的問題は無い!
「安倍元首相の国葬に法的問題などは無い(2/2)」はこちら
◎安倍元首相の国葬!
以下の文章では名称を、現在の世界平和統一家庭連合(略称:家庭連合)」ではなく、
名称変更前の「世界基督教統一神霊協会(略称:統一教会)」を使用し、「旧統一教会」と記述する。
2022年7月8日に安倍元首相が銃撃されて死亡した。
起きたのは参議院選挙直前であり、その事件は各方面に衝撃を与えた。
その後、自民党(特に安倍派)と旧統一教会の関係が注目されて、
最近はその話題で持ちきりとなっている。
そして現在、大きな注目を集めているのが、安倍元首相への国葬である。
安倍元首相への国葬は是か?非か?
最近(9月5日現在)では反対世論が多いように思う。
毎日新聞と社会調査研究センターが実施した全国世論調査(8月20・21日)で、銃撃されて死亡した安倍晋三元首相の国葬について、「反対」は53%で「賛成」の30%を上回った。「どちらとも言えない」は17%だった。
※2022年8月22日 FLASH 赤字は筆者
またTBSの「ひるおび」によると、国葬の賛成が反対より多いのは一紙だけで、
その他は全て反対意見の方が多かったという。
番組では、国葬の是非について報道各社が行った世論調査の結果をまとめ、日本経済新聞(7月29~31日)賛成43%、反対47%、読売新聞(8月5~7日)評価する49%、評価しない46%、共同通信(8月10~11日)納得できる42・5%、納得できない56%、産経新聞(8月20~21日)賛成40・8%、反対51・1%、毎日新聞(8月20~21日)賛成30%、反対53%と伝えた。
※赤字は筆者
このように世論は国葬反対に傾いているように思う。
筆者の意見としては国葬に賛成である。
その理由は安倍元首相が日本の憲政史上、一番長く首相をやったからである。
一番長くやったということは、一番国民に支持されたということであり、
国民の期待に長く答えた政権であるということだ。
日本は民主国家である。
その民主国家は国民の支持によって成り立っている。
つまり国民に支持されない政権は長く維持することすらできない。
国民に強く支持された政権が期待を裏切って失脚せざるを得なかったことが、
日本政治の中でもよくあることだ。
安倍政権は国民の期待に応え続けたので、憲政史上一番長い政権を維持したのだ。
これまでの政権で一番国民に支持され、一番期待に応えてきた政権。
その元首相が非業の死を迎えた。
それ故に最大限の礼節を持って送るべきだと思う。
だから国葬に賛成である。
ところで先に記したように国葬に関しては賛成反対が入り混じっている。
民主国家であるから賛否があるのは健全なことである。
しかしいい加減な説明が世間をまかり通っているのは良くない。
例えば政党として国葬に反対し、出席拒否を声明しているのが日本共産党だ。
その日本共産党は反対理由として以下の5点を挙げる。
1.憲法14条(法の下の平等)違反
2.憲法19条(思想及び良心の自由)違反
3.法的根拠がない。
4.費用総額を示していない。
5.安倍氏の諸々の疑惑を隠し、敬意を強要する。
※ナンバリングは筆者。
これらの中で「1」「2」「5」については”くだらない”としか言いようがない。
どうして法の下の平等の違反になるのか?
日本共産党によると、「なぜ安倍元首相のみを特別扱いにして「国葬」を行うのか。」と言うことのようだが、安倍元首相のように国会議員になり、総理大臣になり、憲政史上最長の政権を作れば、誰でも対象となるだろう。
もし日本共産党の志位委員長が政権を(民主的に)獲得して、憲政史上最長の政権を維持すれば、もちろん国葬に相応しいと議論になるだろう。
これは法の下の平等を何ら犯すことでは無い。
また「2」については「弔意の強制」と言っているが、どうやってやるんだ?
弔意の強制などできる訳が無いだろう。
各家庭に警察が乗り込んでいって、弔意を強制するとでもいうのか?
また「5」に関しては、安倍氏の経歴には功罪があるだろう。
それは別に追求すればイイ。どうして国葬をやったら疑惑隠しになるのだ。
このように日本共産党の国葬反対理由にはいい加減なものが多い。
しかし「3」と「4」に関してはもっともな部分がある。
国葬の費用総額に関しては国民の税金であるからしっかり説明するべきである。
そしてもう一つの反対意見が「法的根拠がない」ということである。
今回はこの部分に焦点を当ててみたい。
◎法的根拠は無いのか?
国葬に関しては戦前は「国葬令」という法律があった。
しかし1947年に現憲法が施行され、失効している。
現在「国葬」そのものを行う法律は無い。
しかし国の行事としての法的根拠はある。
それが内閣府設置法である。
内閣府設置法第四条第3項三十三号に以下の条文がある。
国の儀式並びに内閣の行う儀式及び行事に関する事務に関するこ
(他省の所掌に属するものを除く。)。
このように「国の儀式」が内閣府の行う仕事として明記されている。
これは「国葬」とは書いていないが、
「国の儀式」の中には「国の葬儀」が入るのは当然だろう。
「国葬」というのか「国の葬儀」というのかはさておき、
国が主導して葬儀を行うのは法的に想定されているのだ。
そして内閣府設置法では「内閣府」の任務を以下のように記す。
第三条 内閣府は、内閣の重要政策に関する内閣の事務を助けることを任務とする。
※赤字は筆者
このように内閣府の仕事は「内閣の事務を助ける」ことが任務だと明記されている。
つまり「国の儀式=(国葬・国の葬儀)」を内閣が行うことを当然の前提としているのだ。
◎「組織規範」とは何か?
ところでこの見解に対して、日本共産党はこのように言う。
岸田首相が持ち出している内閣府設置法は、他省庁と区別した内閣府の「所掌事務」の範囲を明確にする組織規範にすぎず、「国葬」実施の根拠法にならない。
※赤字は筆者
ここでは内閣府設置法は「組織規範」に過ぎないので根拠法(つまり法的根拠)にならない、という。
この「組織規範」とは何か?
※以下の部分は「行政法第5版」櫻井敬子、橋本博之 著から引用する。
行政法 [ 櫻井 敬子 ]
「組織規範」とは特定の行政機関の組織に関する定めのことをいう。
具体的な法律としては内閣法や財務省設置法のようにその組織を規定したもの。
当然、内閣府設置法も「組織規範」となる。例えば
第六条 内閣府の長は、内閣総理大臣とする。
第七条 内閣総理大臣は、内閣府の事務を統括し、職員の服務について統督する。
第十三条 内閣府に、副大臣三人を置く。
上記のように、内閣府の組織を規定しているのが内閣府設置法なのだ。
それに対して、日本共産党は「「国葬」実施の根拠法にはならない」という。
例えば天皇陛下が崩御した時に行われる「大喪の礼」は
皇室典範が根拠法となっている。
第二十五条 天皇が崩じたときは、大喪の礼を行う。
※赤字は筆者
このように大喪の礼は法律に基づいて実施が規定されており、
それにより内閣府設置法の「国の儀式」を行うことも認められているが、
「国葬」にはそういった法律が無い。
故に認められない、と日本共産党はいうのだ。
しかしそれは国葬反対の根拠にならない。
なぜなら「組織規範」に過ぎなくても、それを根拠に行政権の行使はできるからだ。
◎行政法の考え方(1)!
ここで「行政法」に関して基本的なことを記しておく。
なぜなら「国葬」に関する議論をするには行政法が避けて通れないからだ。
行政法とはごく簡単に言えば、行政に関わる法律関係を全般的に扱う学問である。
そして行政法は3つに分けられる。
・行政組織法
・行政作用法
・行政救済法
今筆者は「行政法」を始め、いくつかの法律名を挙げたが、
これらの法律は存在しない。
つまり「行政法」という名の法律は無い。
先に記したように「行政に関わる法律全般(1,900ほどある)を指して行政法」という。
そして「行政組織法」も「行政作用法」も「行政救済法」も存在しない。
※「行政○○法」の「行政」を外して、「組織法」「作用法」などともいう。以下はそのように記す。
そして「組織法」とは行政の組織を規定するもの(先の内閣府設置法や財務省設置法など)。
「作用法」とは行政活動として国民に働きかける(作用を及ぼす)もの
(行政指導や行政調査、行政罰など多数)。
「救済法」とは行政の作用によって起きた損害を救済するもの(国家賠償法や行政不服審査法など)。
先に記した「組織規範」とは「組織法」に対応する。
そして「作用法」に対応する規範は「根拠規範」という。
そして「法的根拠がない」とは、
この作用法に基づく「根拠規範がない」のと同義語である。
日本共産党の見解ではこの「根拠規範」がないので、国葬には「法的根拠がない」というのだ。
しかしそうではない。
◎一斉検問の法的根拠!
「組織規範」であっても行政権の行使の根拠にはなるのだ。
それが一斉検問の法的根拠(根拠規範)の問題だ。
警察組織も当然行政機関である。
それ故に組織法も作用法も存在する。その代表的なものは
「警察法(組織法:組織規範)」と「警察官職務執行法(作用法:根拠規範)」である。
そして警察官職務執行法では、警察官は挙動不審者に対しては職務質問ができる。
しかし交通取り締まりの一斉検問は必ずしも挙動不審者ばかりではない。
では一斉検問は法的根拠が無いのか?それが裁判で争われた。
結果は法的根拠がある(1980年9月22日最高裁)。
最高裁は警察法第2条第一項で「交通の取締」を警察の責務と定めている点に注目。
第二条 警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務とする。
※赤字は筆者
この「交通の取締」に対して最高裁はこのように言う。
警察法2条1項が「交通の取締」を警察の責務として定めていることに照らすと、交通の安全及び交通秩序の維持などに必要な諸活動は、強制力を伴わない任意の手段による限り、一般的に許容される
※赤字は筆者
そしてその「必要な諸活動」として「一斉検問」が認められたのだ。
先に記したように、警察法は組織法であり、組織規範である。
しかし最高裁判所は組織規範に対して行政権の行使(一斉検問)を認めた。
これは内閣府設置法という組織規範によっても、
「国の儀式(国葬)」が認められる可能性を示している。
そして国の儀式(国葬)は行政権の行使である。
内閣府設置法、第4条第3項第33号に内閣府の所掌事務として国の儀式に関する事務に関することが明記され、国葬儀を含む国の儀式の執行は、行政権に属することが法律上、明確となっており、閣議決定を根拠として行いうるものであると考えております。
※2022年7月22日 官房長官記者会見より 赤字は筆者
このように「国の儀式」は「行政権に属する」と明言している。
そして日本国憲法によって、行政権は内閣に属することも明記されている。
第六十五条 行政権は、内閣に属する。
そして組織規範である内閣府設置法によって「国の儀式」が規定されている以上、
国葬(国の儀式)は行うことができるのだ。
ところで筆者は内閣府設置法(組織規範)を法的根拠に国葬ができる、と述べたが、
それには別の解釈もある。
つまり国葬に法的根拠は必要なのだろうか?
そして筆者は言う。国葬に法的根拠は必要なく、閣議決定でできる…と。
長くなりましたから続きます。
「安倍元首相の国葬に法的問題などは無い(2/2)」はこちら